「心に残るプレゼント」
2024年度受賞作品紹介
あなたの「心に残る」プレゼントはなんですか?
株式会社ハピネス・アンド・ディでは、今年もプレゼントにまつわるストーリーを募集いたしました。
第5回となった今回もみなさまからたくさんのご応募をいただき、数々の心温まるエピソードが集まりました。
その中からよりすぐりの「心に残るプレゼント」ストーリーをご紹介します。
ペンネーム:星龍実佳さん
-真珠のネックレス-
「出掛けるぞ!」
2月の終わり、まだ寒い午前中のこと。
小学4年生だった私は、母がパートに出かけた後、父にそう声をかけられた。
いつも父と2人でドライブに行っていたので、違和感なく車に乗り込んだ。片道2時間くらいはあったろうか。
私は車中ずっと外を眺めていた。
私たちは多くを話す親子ではなく、厳しい父だったため、言われるがまま、口答えなど以ての外だった。
そして着いた先は、天草パールセンター。
何度か訪れたことのある場所だった。
中に入ると、貝から真珠を取り出す体験コーナーや、アクセサリーを作るパーツが並んでいた。
父はアクセサリーが並ぶ方へ向かい、私も後ろからついていった。
ショーケースに並んだアクセサリーを見ながら、「母さんに似合うのを選びなさい。」と父が小声で言った。
まるくツヤツヤした真珠がさまざまな大きさで首だけのマネキンに掛けられていて、どれも綺麗だったが、まんまるでなくちょっとハートっぽい平たい真珠のネックレスが珍しいと思い、「これがいい!」と決めた。
父が店員に贈り物だと伝えると、ネックレスは可愛い花柄の包装紙に包まれ、ピンクのリボンが付けられて返ってきた。
「誕生日だから、メッセージを書いて渡しなさい」と父が言う。
家に帰ってすぐ、私はペンで「50歳のお誕生日おめでとう」と書き、母の帰りを待った。
しばらくして、母が仕事から戻ってきた。
私は急いでプレゼントを背中に隠しながら母のもとへ行き、「お誕生日おめでとう」と言ってプレゼントを渡した。
母は驚いた表情を浮かべ、「ありがとう」と受け取って、早速ネックレスを着けてみた。
すると、それはぴったりと母に似合い、母も満足げだった。
母も子どもがこんな高価な物を買えるわけないから、父が買った事は既に承知済み。
子どもを出しに使ってと、心の中で笑った筈。
それから30数年が経ち、母は亡くなった。
遺品整理をしていると、その真珠のネックレスが綺麗なままで出てきた。
今では私の手元に置いてあるが、見るたびにあの日のことを思い出し、仏壇の母の写真に話しかける。
この出来事がきっかけで、私は人にサプライズをすることが大好きになった。
ペンネーム:こまぴょんさん
-二つのプレゼント-
「何年使っているのか知らないけど、バッグがボロボロだったじゃない?ママもいい年なんだから、ブランドバッグの一つくらい持っていないと、みっともないよ。」
母の日に、ブランドのショルダーバックを送ってくれた次女に、お礼の電話をした時の言葉だ。
つっけんどんなその言葉の中に、彼女なりの優しさが滲んでいた。
もう6年も前のことだが、問題児だった次女からこんな素敵なプレゼントを貰えたことが、とても感慨深かった。
次女が言うように、私はそれまでブランドバッグを一つも持っていなかった。
大きくて丈夫なら何でもよかったし、ブランドにこだわらないということもあったが、やはりお金に余裕がなかったのが大きな理由だ。
子どもたちが学生だった頃は、家のローン、学費、塾代、下宿代など、多額のお金が必要で、私はパートを3つも掛け持ちしていた。
そんな中でブランドバッグを買うなんて、考えることもなかった。
その頃は経済的な余裕がないだけでなく、家庭内で荒れる次女にも悩んでいた。
いじめによるストレスの反動だったのだと思う。
毎日が疲労困憊で、日々を何とか過ごす事で精一杯だった。
嵐のような日々が、終わる日は来るのだろうかと思っていたのだ。
そんな次女だったが、大学進学を機に一人暮らしを始めた。
その後、大学を卒業し、紆余曲折を経て現場監督の仕事を任されるようになった。
その働いたお金で、私にブランドバッグを買ってくれたのだ。
後から気付いたのだが、バッグの中には小さなメモが入っており、こう書かれていた。
「たくさん迷惑かけてごめん!」
素直になれない次女らしい大雑把な言葉だった。
「あんなに荒れていて私と揉めていた子が、こんな素敵な手紙とプレゼントをくれるなんて。」
そう思うと、涙がこぼれそうになった。
ブランドバックも凄く嬉しかったが、手紙も同じ位、いや、それ以上に嬉しかった。
それ以来、ブランドバッグは大切に使い続け、今でも綺麗な色合いを保っている。
手紙(というかメモだが)も財布に入れて、毎日持ち歩いている。
たとえこの先、バッグの色がくすんだり、紙がボロボロになったとしても、この二つのプレゼントはずっと持ち続けるつもりだ。
なにしろ、次女の気持ちがたくさん込められているのだから。