「心に残るプレゼント」
2021年度受賞作品紹介
あなたの「心に残る」プレゼントはなんですか?
株式会社ハピネス・アンド・ディでは、今年もプレゼントにまつわるストーリーを募集いたしました。
今回もみなさまからたくさんのご応募いただき、数々の心あたたまるエピソードが集まりました。
その中からよりすぐりの「心に残るプレゼント」ストーリーをご紹介します。
ペンネーム:キノウさん
-贈り物の本当の意味-
二十三歳で結婚したひとつ年上の夫は、二十四歳で突然いなくなってしまった。
車の事故だった。
おつきあいしていた頃から夫はちょっとした小物や雑貨、アクセサリーから、クリスマスや記念日など特別な時も、数多くのプレゼントをサプライズしてくれた。
思えば、私からねだったことは一度もなかった。
母が形あるものには厳しい人だったので、物欲が育たなかったらしい。
日々の何気ない会話から、時には私の双子の妹から、さりげなく私が喜びそうなものをリサーチしていた夫。
その情熱を、申し訳ないが当時の私は理解できなかった。
戸惑う私に夫は笑って言った。
「贈り物は、贈ったほうも幸せになるんですよ」
その一言を聞いた瞬間、私の中で何かが破れ、弾け飛んだ。
最初は水風船くらいだったものが、夫のおかげで薄いシャボン玉くらいにはなっていた、「贈り物の本当の意味」。
まだ恋人同士だった頃、私の地元近くの観光地へ遊びに行ったことがあった。
ふと、立ち並ぶ土産店の中で見つけた、小さな動物が付いたキーホルダー。三百円くらいのものだった。
私が「これ、かわいい」と目を輝かせると、彼も「かわいいね、買おうか」と手に取った。
何色かあるうち、お互いにお互いの好きな色を選んでプレゼントした。
しかし、一週間ほど経って彼が、まるで世界が終わるような顔をして私に言った。
「あのキーホルダーを無くしてしまった!どうしよう」
私は大事とは思わず、笑いながら答えた。
「じゃあ私のをあげるよ」
すると、彼が怒ったように答えた。
「それじゃダメだ! 君がくれたあの色と同じでなきゃダメだ」
結局彼は、丸一日かけて同じ場所の同じ店へ同じものを買いに走った。
値段だけならその価値は決して高くない。
だが彼にとっては、黄金や宝石のような、もっと言えばどんなにお金を出しても決して買えない大切なものだったのだ。
この出来事から、私は彼のことを心から真剣に愛するようになった。
冬の寒い朝、早足で歩く私に息を切らしながらラブレターを渡してきた彼。
彼から夫になってもずっと、この想いは続いている。
夫を亡くしてから、妹がいつも側にいてくれた。
夫のものは何ひとつ残らず持っているけれど、いつも鞄の中で揺れているのは、あの日の色違いのキーホルダー2つだ。
ペンネーム:みっちゃんさん
-雨の日にさせない傘-
プレゼントをするから、なにがいいか聞いてくれた。
大事に使えて、ずっと使えて、気持ちが温かくなるものを考えた。
おしゃれなブランドものの傘にした。
バーバリーの定番の傘。
柄が長くて、クリーム色で明るく雨の日が、楽しくなる。
雨の日。
使うと傘が濡れてしまうので、いつも使っている傘をさした。
次の雨の日も、風が強く、骨が折れたら大変と、いつも使っている傘にした。
この先、これぞと思う大事に日には、この傘の登場と、待っている。
晴れ女なので、いざ出陣の日は、晴れ。
だから、まだ、大事に、傘立てにある。
でも、でも、次回の雨の日には、使おう!
これからの毎日が、大事な出陣と思って。
生かされている今日を大切な大事な日と思って。
ありがとう、息子。
母は、感謝です。
ペンネーム:ふーみんさん
-最後のお弁当-
毎週木曜日、娘が幼稚園にお弁当を持っていく。
いつもよりちょっぴり早起きして、野菜をトントン切るうち、だんだん背筋が伸びてくる。
お肉を炒めて、海苔をこまかく切って、くだものを星や花のもように型抜きして……。
「うふふ、できた、できた」
レシピ通りにつくったトトロのキャラ弁に満足して、写真をパシャリ。
紺色のリュックにつめて、明るく娘を送り出す。
午後二時半、元気よくバスから降りてくる子どもたちはみな、元気いっぱい。
「ママー、みてみてー」
パカッと開いた弁当箱は、すっからかんの空っぽだ。
残しがちだったほうれん草やにんじんも、きれいに食べ切ってある。
はれわたる青空のように、スカッといい気持ち!
「ぜんぶ食べて、すごいっ、えらいねー」
「えへへ、ごちそうさま。次は、パンダのおむすびがいいな。ミートボールも食べたい」
「オッケー、まかせて!」
娘のリクエスト通りに作り続けて、いよいよ幼稚園最後のお弁当の日になった。
これまで買いためたキャラ弁キットを総動員して、春をイメージしたミッフィーのお弁当をつくった。
娘がお気に入りのお箸ケースとお弁当袋とおそろいだ。
(喜んでくれたらいいな。友達となかよく、最後のお弁当を楽しんでほしいな)
そう願って、やさしい笑顔で見送った。
園バスからおりてきた娘は、いつも通りにこにこ。
でも、お弁当箱をパカッと開けない。
代わりにモジモジしながら、「はいっ」と、ミッフィーの袋を差し出してくる。
(あれ? おかしいな。おいしくなかったかな……)
ちょっぴりがっかりしながら、袋から弁当箱を取り出した。
蓋を開けると、空っぽの箱の中に、ハートの形に折られた手紙が一枚。
ていねいに広げてみると、たどたどしい字でこう書かれてあった。
「ママ、おいしいおべんとうをつくってくれてありがとう。だいすき!」
ひと文字ひともじ、ゆっくり噛み締める。
目がじんわり潤んで、思わず涙がぽろりと零れた。
がんばってつくってきて、よかったな。
本やネットでいろいろ調べ、しっかり下準備し、すっからかんの弁当箱を期待して励んだ。
初めは慣れずに大変だったけど、いつしかぴかぴかの笑顔を見るのが楽しみになっていた。
しばらくお休みになるけど、これからも週末に娘といっしょにお弁当をつくって、ピクニックや登山を楽しみたいと思う。